ショートショート バブルの泡と回る経済

ソープ嬢のミオは、夜の街で人気のあるホスト・レンに恋をしていた。レンは言う。
「お前が稼いだ分だけ、俺に投資してくれたら、それが俺の価値になる」

ミオはその言葉を信じ、週に何度も自分の指名客をこなしては、その稼ぎをレンのシャンパンタワーに注ぎ込んだ。

一方、ミオにとっての太客・サトウは、彼女のことを「心のオアシス」と呼び、月に数十万円を落としていた。彼は都内の中堅商社に勤めるサラリーマン。妻子持ちだが、ミオに会う時間だけが彼にとっての「現実逃避」だった。

レンは言う。
「お前は資本を持ってる。だけど、俺は資本を使って夢を売ってる。俺たちはパートナーなんだよ」

サトウは言う。
「君と話してると、心が満たされる。でも、それは幻想かい?」

ミオは思う。
「——私は誰に幻想を売り、誰に幻想を買わされてるんだろう。」

ある晩、サトウは昇進を断られ、会社を辞めた。支出を見直す中で、最初に削られたのはミオへの支出だった。
その月から、ミオはレンへの投資額を減らしていった。

するとレンは言った。
「最近、シャンパンも入らないし、会う意味ある?」

レンは去った。

サトウも来なくなった。

ミオの稼ぎは落ちていった。泡のように、膨らんではじける恋と金。

彼女は思う。
「——市場は正直だ。感情も、幻想も、価格で決まる。」

そして次の新しい客がやってきた。

経済は、回り続ける。

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