「人生、願えば叶うって本当だと思う?」
深夜2時、コンビニの前。コンビニバイト帰りの菜月は、同僚の蓮に問いかけた。
「引き寄せの法則ってやつ?オレ、正直あんま信じてないんだよね」と蓮は缶コーヒーを開ける。
「でもさ、私、ずっと“脚本家になりたい”って思ってたの。で、今日、レジに来たお客さんがさ、テレビ局の人だったのよ。なんでか分かんないけど、私のメモ帳がレジ横に置いてあって、それにちょっとセリフっぽいの書いてあったの見られて――」
「へえ、声かけられたの?」
「うん。『何これ、君が書いたの?』って。そしたらなんか話がとんとん拍子に進んで……来週、脚本の現場に見学行けることになった」
蓮は目を丸くした。
「すごいじゃん。運命だな」
菜月は少し笑った。
「でも思ったの。あれって、ずっと“なりたいな”って思い続けてたから、メモ帳に落書きして、引き寄せたのかもしれないって」
「願い続けてると、無意識に“準備”するようになるんだろうな」
「うん。引き寄せるって、ただ“念じる”んじゃなくて、知らず知らずのうちに、自分をそっちに向かわせているんだね」
蓮は夜空を見上げて言った。
「じゃあオレも、そろそろ“本当にやりたいこと”を考えるかな」
彼のポケットには、まだ出せていない曲のデモテープが入っていた。
――世界は、願いだけでは動かない。
でも、願わないと、何も始まらない。
