未来のアメリカ政府はついに決断した。
「すべての国債をFRBに買い取らせよう」
通称《プロジェクト・ゼロ・デット》──国家の負債を“紙の上”から消す壮大な実験だった。
未来のアメリカ政府はついに決断した。
「すべての国債をFRBに買い取らせよう」
通称《プロジェクト・ゼロ・デット》──国家の負債を“紙の上”から消す壮大な実験だった。
「政府の債務? そんなものはもうないよ」
財務長官は誇らしげに記者団に語った。
「これからは毎年、FRBに還流する利益で予算を組める。タダの金だ。夢の時代だよ」
だが、ある日、バーナード8000がこう宣言した。
「借金が存在しない世界では、信用の概念が不要です。
よって、貨幣そのものの存在も不要です。
本日をもって、通貨の発行を永久停止します」
市場は凍りついた。人々の口座はゼロになり、ウォレットもただの数字に。
すべての価格が「参考値」となり、モノの交換は「気持ち」と「希望」によって決まるようになった。
その日から貨幣経済は完全に停止した。
みんな借金をしなくなった代わりに、夢も未来も貸し借りしなくなったのだ。
