時代の空気が変わる――そんな実感があったのは、いつの頃だったろうか。
「風の時代」が来たと聞いたのは、2020年の年末だったような気がする。占星術の世界では、木星と土星のグレート・コンジャンクションが「水瓶座」で起こり、これから200年は「風」のエレメントのもとに社会が変容していくと言われている。
情報と知性、ネットワーク、個性、そして自由。
風の時代とは、そうした「目に見えない価値」が重んじられるようになるという。
けれど、そんな変化を私はすでに知っていた気がする。
それは、ジャズという音楽の中に――。
即興という自由
ジャズの魅力とは何か。それは、譜面や型を越えて、奏者ひとりひとりの感性が音になるところだと思う。
アドリブの瞬間、その人の思いが「今、ここにしかない形」で響く。
それは、ある意味「風のよう」だ。
掴めない。縛れない。けれど、確かにそこにある。
風が草木を揺らすように、音が心を揺さぶる。
この即興性、自由、そして対話の音楽こそ、「風の時代」の精神そのものではないだろうか。
固定された美から、多様な美へ
かつて芸術は、形式や伝統を守ることが重視された。
だが今は、多様性が歓迎される時代になった。
ジャズも、クラシックと融合したり、ヒップホップと共鳴したり、国境を越えて広がりを見せている。
演奏家も、リスナーも、それぞれのスタイルで関わりながら、音楽とともに「今を生きる」。
それはまるで、風に乗って旅をするようなものだ。
ひとつの「正解」に縛られず、自分らしい道を見つける。
ジャズもまた、「答えのない問いを音で語る」芸術なのかもしれない。
誰もが「肩書き」ではなく、「人そのもの」として、そこにいた。
音楽を介して、誰かとつながる。
それは、まさに風のような関係――軽やかで、心地よく、自由だった。
生き方を選びなおす時代に
風の時代は、「あなたはどう生きたい?」と問いかけてくる。
所有することよりも、共有すること。
形あるものより、体験そのものの価値。
誰かの正解ではなく、自分だけの物語を。
そんな時代に、私はまたジャズを聴きたくなる。
それは音楽であり、哲学であり、生き方のヒントでもあるからだ。
自由と即興を受け入れること。
不確かさの中に、自分のリズムを見つけること。
それはまさに、風を味方につける生き方なのかもしれない。
風の時代。
それは、新しい扉がひらかれる時代。
その鍵のひとつは、たぶんジャズのような音楽の中にある。
過去と未来のあいだに、今日という一日が流れている。
その一日を、どんなリズムで生きよう。
風のように、軽やかに、でも芯を持って。
そんなふうに、生きていけたらと思う。
