ジャズの発展において、ジャズ・レーベル(レコード会社) は非常に重要な役割を果たしてきました。
ジャズ・レーベルには、それぞれの時代やジャンルごとの特色があり、「どのレーベルに所属していたか」 でアーティストの音楽性や方向性がある程度わかることもあります。
主要なジャズ・レーベルと特徴
Blue Note Records(ブルーノート・レコード)
創立: 1939年(アメリカ・ニュソニー・クラークーヨーク)、創設者: アルフレッド・ライオン & フランシス・ウルフ
特徴:ハードバップ、モダン・ジャズの中心的レーベル、洗練された録音技術と音質の良さ が特徴、リード・マイルスによるアートワーク(ジャケットデザイン)が有名、ルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)のエンジニアリング により、クリアで迫力のあるサウンド。
主なアーティスト:マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ハービー・ハンコック、アート・ブレイキー & ザ・ジャズ・メッセンジャーズ、ホレス・シルヴァー、ソニー・クラークetc.
代表的なアルバム:Art Blakey – Moanin’(1958)、Herbie Hancock – Maiden Voyage(1965)、John Coltrane – Blue Train(1957)
Prestige Records(プレスティッジ・レコード)
創立: 1949年(アメリカ・ニューヨーク)、創設者: ボブ・ワインストック
特徴:ハードバップやソウル・ジャズの名盤が多い、即興性を重視した録音 が特徴(多くのセッションがワンテイクで録音された)、ブルーノートと比べると、ラフで生々しい演奏 が魅力。
主なアーティスト:マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、ジーン・アモンズ、エリック・ドルフィー
代表的なアルバム:Miles Davis – Cookin’ / Relaxin’ / Workin’ / Steamin’(1956-57)、John Coltrane – Soultrane(1958)、Sonny Rollins – Saxophone Colossus(1956)
Verve Records(ヴァーヴ・レコード)
創立: 1956年(アメリカ)、創設者: ノーマン・グランツ
特徴:ビッグバンド・ジャズやボーカル・ジャズに強いレーベル、モダンジャズの名盤も多数リリース、ライブ録音が多く、臨場感あふれるサウンドが魅力、エラ・フィッツジェラルドの「ソングブック」シリーズが有名。
主なアーティスト:エラ・フィッツジェラルド、オスカー・ピーターソン、チャーリー・パーカー、スタン・ゲッツ、アントニオ・カルロス・ジョビン。
代表的なアルバム:Ella Fitzgerald – Ella Fitzgerald Sings the Cole Porter Songbook(1956)、Stan Getz & João Gilberto – Getz/Gilberto(1964)、Charlie Parker – Charlie Parker with Strings(1950)
Riverside Records(リバーサイド・レコード)
創立: 1953年(アメリカ・ニューヨーク)、創設者: ビル・グラウアー & オリン・キープニュース
特徴:モダンジャズ、特にピアノトリオの名作が多い、プロデューサーのオリン・キープニュースによる質の高いプロデュース、ブルースやトラディショナル・ジャズの発掘も行っていた。
主なアーティスト:セロニアス・モンク、ビル・エヴァンス、ウェス・モンゴメリー、キャノンボール・アダレイ
代表的なアルバム:Bill Evans – Waltz for Debby(1961)、Thelonious Monk – Brilliant Corners(1957)、Wes Montgomery – The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery(1960)
ECM Records(ECMレコード)
創立: 1969年(ドイツ)、創設者: マンフレート・アイヒャー
特徴:「静寂の美学」とも称される透明感のあるサウンド、ジャズとクラシック、アンビエントが融合した独特の音楽性、録音のクオリティが極めて高い。
主なアーティスト:キース・ジャレット、パット・メセニー、チック・コリア、ヤン・ガルバレク
代表的なアルバム:Keith Jarrett – The Köln Concert(1975)、Pat Metheny – Bright Size Life(1976)
Atlantic Records(アトランティック・レコード)
創立: 1947年(アメリカ・ニューヨーク)、創設者: アーメット・アーティガン & ハーブ・エイブラムソン
特徴:もともとはR&Bやソウルのレーベルとして有名だが、ジャズの名盤も多数リリース、ハードバップからモード・ジャズ、フリー・ジャズまで幅広いスタイルをカバー、ジョン・コルトレーンの「Giant Steps」 をリリースしたレーベル。
主なアーティスト:ジョン・コルトレーン、チャールズ・ミンガス、オーネット・コールマン、レイ・チャールズ、モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)
代表的なアルバム:John Coltrane – Giant Steps(1960)、Ornette Coleman – The Shape of Jazz to Come(1959)、Charles Mingus – Blues & Roots(1960)
Impulse! Records(インパルス・レコード)
創立: 1960年(アメリカ・ニューヨーク)、創設者: クレボール・グリーン
特徴:「The House That Trane Built(トレーンが築いた家)」 と呼ばれるほど、ジョン・コルトレーンの活動の拠点となったレーベル、スピリチュアル・ジャズ、フリー・ジャズの名作が多い、鮮やかなオレンジと黒のカラーデザインが特徴的なレーベル。
主なアーティスト:ジョン・コルトレーン、チャールス・ミンガス、アーチー・シェップ、マッコイ・タイナー
代表的なアルバム:John Coltrane – A Love Supreme(1965)、Pharoah Sanders – Karma(1969)、Charles Mingus – Mingus Mingus Mingus Mingus Mingus(1963)
SteepleChase Records(スティープルチェイス・レコード)
創立: 1972年(デンマーク)、創設者: ニルス・ウィンター
特徴:アメリカのジャズ・ミュージシャンがヨーロッパで活躍する場を提供、ビバップやハードバップのアーティストが多い。「ジャズ・メッセンジャーズ」や「マイルス・デイヴィス・グループ」出身のプレイヤーの作品が豊富。
主なアーティスト:デクスター・ゴードン、シダー・ウォルトン、ケニー・ドリュー
代表的なアルバム:Dexter Gordon – The Apartment(1974)、Kenny Drew – Dark Beauty(1974)
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