映画の中のジャズ
シェルプールの雨傘
シェルブールの雨傘は、1964年に公開されたフランス・西ドイツ合作のミュージカル映画です。監督はジャック・ドゥミ、音楽はミシェル・ルグランが担当しました。
物語は、フランスのノルマンディー地方の港町シェルブールで、傘屋の息子ジェロームと、歌手を目指すジェルヴェの恋を描いたものです。二人は恋に落ちますが、第二次世界大戦の勃発により、ジェロームは徴兵され、ジェルヴェはドイツに連行されてしまいます。
この映画は、会話もすべてレチタティーヴォで歌われるというユニークな形式で注目を集めました。また、ミシェル・ルグランの美しい音楽と、ジャック・ドゥミの色彩豊かな映像も高い評価を受けました。
第17回カンヌ国際映画祭では、グランプリを受賞しました。
ロシュフォールの恋人たち
『ロシュフォールの恋人たち』(1967年)は、ジャック・ドゥミ監督のフランスのミュージカル映画です。カトリーヌ・ドヌーヴとドヌーヴの実の姉であるフランソワーズ・ドルレアックを始め、ジーン・ケリー、ジョージ・チャキリス、ジャック・ペラン、ダニエル・ダリュー、ミシェル・ピコリといった豪華な出演者が登場しています。
あらすじは、フランスの港町ロシュフォールで、美しい双子の姉妹ソランジュとデルフィーヌは、運命の恋人を探していました。ある日、姉妹は街で、アメリカから来たミュージシャンのジェリーとジョニーと出会います。ジェリーはソランジュに、ジョニーはデルフィーヌに恋をします。しかし、姉妹は、それぞれの恋を応援し合うことにしました。
映画は、ロシュフォールの美しい街並みを舞台に、恋、音楽、ダンスが繰り広げられます。ドゥミ監督の美しい映像と、ミシェル・ルグランの軽快な音楽が印象的な作品です。
男と女
1966年に公開されたフランスの恋愛映画「男と女」は、クロード・ルルーシュ監督が手掛けた作品です。当時無名だったルルーシュが自ら資金を調達して製作した本作は、第19回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、ルルーシュの名を世界に知らしめました。
物語は、スタントマンの夫を亡くした脚本家アンヌと、妻に自殺されたレーサーのジャン・ルイが、寄宿学校にいる互いの子どもを通じて知り合うところから始まります。互いに好意を抱いた彼らは、徐々に距離を縮めていき、やがて芽生えた愛を隠しきれなくなります。
本作は、台詞をほとんど使わずに、フランシス・レイの音楽と美しい映像で、二人の恋を描いた作品です。海岸線や山道をドライブするシーン、浜辺で戯れるシーンなど、印象的な映像が多く、映画史に残る傑作として評価されています。
また、本作は、1960年代のフランス社会を背景にした作品でもあります。当時のフランスは、経済成長やベビーブームなど、急激な変化の時代でした。アンヌとジャン・ルイの恋は、そんな時代の空気を反映した物語として、現代でも多くの人々に共感されています。
リスボン特急
『リスボン特急』は、1972年制作のフランス・イタリアのフィルム・ノワールです。ジャン=ピエール・メルヴィル監督の最後の作品であり、アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴらが出演しています。
あらすじは、以下の通りです。
表向きはナイトクラブの経営者だが、実はギャングという裏の顔を持つシモンは、仲間のルイ、マルク、ポールと大西洋に臨むある小さな町の銀行を襲撃、大金を強奪する。しかし、隙をつかれてマルクが撃たれ、負傷してしまう。
一方、パリ警視庁のコールマン刑事は、密告者の情報から、リスボン特急で麻薬が運ばれることを知る。同じくこれを知ったシモンたちは、麻薬の横取りを計画して実行に移すが、コールマン刑事によって阻止される。
しかし、シモンはコールマン刑事がかつての戦友であることに気づく。コールマン刑事もまた、シモンを捕まえなければならないという使命感と、かつての友情の間で揺れ動く。
この映画は、メルヴィル監督が得意としたフィルム・ノワールの要素をすべて備えています。暗く陰鬱な映像、ドライな会話、そして運命に翻弄される男たちの悲劇。
特に、シモンとコールマン刑事の運命の交錯は、メルヴィル監督の映画の大きなテーマである「宿命」を象徴しています。本作は、メルヴィル監督の遺作となったこともあり、彼の最高傑作の一つとされています。また、アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴの共演も話題となりました。
ティファニで朝食を
1961年に公開された、アメリカ合衆国のロマンティック・コメディ映画です。トルーマン・カポーティの同名中編小説を原作としており、監督はブレイク・エドワーズ、主演はオードリー・ヘプバーンです。
ニューヨークのアッパーイーストサイドに住む、自由奔放な女性ホリー・ゴライトリーを描いた作品です。ホリーは、幼い頃に両親を亡くし、テキサスの金持ちの夫と結婚しましたが、夫の浮気に耐えられず、ニューヨークに逃げてきました。
ホリーは、ティファニーのショーウィンドウを見ながら朝食を食べるのが日課です。ある日、彼女のアパートの隣室に、作家志望の青年ポールが引っ越してきます。ポールは、ホリーの自由奔放な生き方に惹かれていきます。
ホリーとポールは、一緒にヨーロッパ旅行に出かけます。しかし、ホリーは、ポールに自分の過去を打ち明けられずにいました。ある日、ホリーの夫が彼女を連れ戻しにやってきます。
映画のタイトル「ティファニーで朝食を」は、ホリーが言う「ティファニーで朝食を食べられるくらいのご身分」という例えから来ています。ホリーは、裕福な家庭に生まれましたが、親の愛情を受けることができませんでした。彼女は、ティファニーで朝食を食べることで、自分は特別な存在なのだと信じています。
映画は、ホリーの自由奔放な生き方と、ポールの真っ直ぐな愛の物語です。ホリーとポールの恋は、叶わぬ恋でしたが、観客に幸せな気持ちを与える、名作映画として知られています。
華麗なる賭け
アメリカ映画「華麗なる賭け」は、1968年に公開された犯罪ロマンス映画です。監督はノーマン・ジュイソン、主演はスティーヴ・マックイーン、フェイ・ダナウェイです。
ボストンの銀行から大金が盗まれる事件が発生します。被害を受けた保険会社のマクドナルドは、事件の調査をビッキー・アンダーソンに命じます。ビッキーは、事件の容疑者として、裕福な実業家トーマス・クラウンをマークします。
クラウンは、実は銀行強盗を趣味とする男でした。彼は、ビッキーに惹かれながらも、彼女の追跡をかわして次々と銀行を襲います。
ビッキーは、クラウンの正体に迫っていくうちに、彼の意外な一面を知ります。そして、彼の誘いに応じて、2人は恋に落ちてしまいます。物語は、クラウンとビッキーの恋と、彼の銀行強盗の行方を軸に展開していきます。
映画の評価は高く、アカデミー賞では主題歌賞を受賞しました。また、スティーヴ・マックイーンの代表作の1つとしても知られています。
タクシードライバー
1976年に公開されたアメリカ映画『タクシードライバー』は、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演の犯罪映画です。
ベトナム戦争でトラウマを負った元海兵隊員のトラビス・ビックルは、ニューヨークの夜の街をタクシーで走りながら、社会の腐敗や悪に激しい怒りを覚えていました。ある日、14歳の少女ベイビーを売春から救いたいと考えたトラビスは、彼女を連れ去り、自分を救ってくれる救世主である大統領候補パランタインの演説会に連れて行こうとします。しかし、パランタインの演説会でトラビスは銃を乱射し、逮捕されてしまいます。
この映画は、ベトナム戦争後のアメリカ社会の混乱と、戦争から帰還した兵士たちのPTSDを鋭く描いた作品として、高い評価を受けました。また、ロバート・デ・ニーロの圧倒的な演技も、この映画の魅力のひとつです。
この映画は、アメリカ映画史に残る傑作として、今もなお多くの人々に愛され続けています。
ラ・ラ・ランド
『ラ・ラ・ランド』は、2016年に公開されたアメリカ合衆国のロマンティック・ミュージカル映画です。デミアン・チャゼルが脚本・監督を務め、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンが主演を務めました。
物語は、夢を追う人々が集まるロサンゼルスを舞台に、女優志望のミアとジャズピアニストのセブの恋愛を描いています。
ミアは、映画スタジオのカフェで働きながら、女優を目指してオーディションに挑戦し続けています。ある日、彼女はハリウッドの街並みをバックに、セブと出会います。セブは、場末のバーでピアノを弾きながら、自分の店でジャズを心ゆくまで演奏したいという夢を抱く青年でした。
2人は、互いの夢を応援し合いながら、恋に落ちていきます。しかし、夢と現実の狭間で、彼らは葛藤し、別々の道を歩み始めます。
『ラ・ラ・ランド』は、往年の名作ミュージカル映画を彷彿させるゴージャスでロマンチックな歌とダンスが魅力の映画です。また、夢と現実の狭間で揺れ動く若者の姿を描いたストーリーも、多くの人の共感を呼びました。
公開当時、本作は世界中で大ヒットを記録し、アカデミー賞では最多6部門を受賞しました。主演のライアン・ゴズリングとエマ・ストーンは、それぞれ主演男優賞と主演女優賞を受賞しました。
モ’・ベター・ブルース
モ’・ベター・ブルースは、1990年に公開されたアメリカのドラマ映画です。監督はスパイク・リー、主演はデンゼル・ワシントンです。
物語は、ニューヨークを拠点に活動するジャズ・トランペッター、ブリーク・ギリアムの半生を描いたものです。ブリークは幼い頃から母親にトランペットを習い、才能を開花させます。やがて、彼は人気バンドのリーダーとなり、成功を収めます。
しかし、ブリークは才能とは裏腹に、エゴが強く、バンドのメンバーとの衝突も絶えません。また、私生活では、教師のインディゴとジャズ歌手のクラークという2人の恋人の間で揺れ動いています。
そんな中、バンド内は不和状態になり、女性たちとブリークの仲もこじれていきます。さらに、ギャンブルにのめり込んだマネージャーのトラブルに巻き込まれ、唇を殴られたブリークは再起不能になってしまいます。
映画は、ジャズの名曲にのせて、ミュージシャンの人生ドラマを描いています。また、ジャズシーンにおける人種差別や、成功と挫折を繰り返すブリークの姿を通して、人生の普遍的なテーマも問われています。
デンゼル・ワシントンは、ブリーク役を演じるために、トランペットの演奏を習得しました。また、スパイク・リー監督は、映画のサウンドトラックに、ジョン・コルトレーンの「至上の愛」や、マイルス・デイヴィスの「ブルー・イン・グリーン」などの名曲を起用しています。
ミッドナイト・イン・パリ
『ミッドナイト・イン・パリ』は、2011年に公開されたアメリカ映画です。ウディ・アレンが脚本・監督を務め、オーウェン・ウィルソン、レイチェル・マクアダムス、マイケル・シーン、カルラ・ブルーニ、キャシー・ベイツ、マリオン・コティヤール、エイドリアン・ブロディらが出演しています。
物語は、ハリウッドで売れっ子脚本家として活躍するギル・ペンダーが、婚約者のイネスとその両親とともにパリを訪れるところから始まります。ギルはパリの街並みに魅了され、小説家への転身を決意します。しかし、イネスはマリブに住みたいと考えており、ギルとの意見が対立します。
ある夜、ギルは深夜0時に鐘の音とともに、1920年代のパリへとタイムスリップします。そこで、ヘミングウェイやピカソ、サルトル、フォード・マドックス・フォードなどの芸術家たちと交流を深めていきます。
ギルは、1920年代のパリで過ごすうちに、自分の本当の生き方を見つけていきます。そして、イネスとの関係を再考するようになります。
本作は、ウディ・アレンの代表作のひとつであり、第84回アカデミー賞で脚本賞を受賞しました。パリの街並みを美しく描いた映像と、ウディ・アレンらしいユーモアとロマンが融合した作品です。
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